子猫から飼い始めた猫も、いつかは年老いて老猫になってしまいます。そんな時に必要なのは介護です。老化の進み具合は個々で違いますし、病気の状態によっても変わってきます。そしてその病気でやっかいなのが認知症。ただでさえ体が弱っているのに認知能力まで衰えてしまうんです。
でも、老化しても基本的なお世話は若い時と一緒で、そこにプラスアルファがあります。老猫の介護に大切なポイントを知って、飼い主も猫もストレスが少ない状態でできるように今の内から準備しましょう。この記事では介護にあたっての注意点や認知症の予備知識をお伝えできればと思います。
猫の介護は何歳から?
猫は人間よりも速いスピードで介護が必要になります。介護はお世話をすることです。でも、大変さが伴うものでもあります。時間的にも金銭的にも体力的にも飼い主に負担がかかってくることがあることを今から理解しなくてはなりません。
何歳から介護という明確な歳はありません。なぜなら、猫種にもよりますし、生活環境や猫の体の状態にもよるからです。
7~8歳くらいになると、シニア用のキャットフードに変えるという目安がありますので、そこを基準にしてもいいと思います。
毎年、定期検診に連れて行くことで、獣医からも話があるでしょう。それを目安にするようにしてみてください。
我が家にいた猫(当時15歳:オス:MIX)は、15歳という年齢でもかなり元気で、毛艶も良かったですし、病気もありませんでした。一緒に飼っていた子猫たちとも追いかけっこをするくらい元気でした。
別な猫(当時6歳:オス:MIX)は、シニアのキャットフードを与える手前でしたが、寝ていることが多く、トイレに行くのがやっとという感じでした。尿管結石を数回やっていたこともあって、腎臓が悪くなっていました(定期検診で発覚)。そしてすぐに介護が必要になりました。
うちにいた猫でもこのように差があるくらいです。同じ環境で生活をしていても個々によって介護が必要な年齢が違うということはわかっていただけたと思います。猫の年齢と平均寿命に関しては以下の記事で詳しく説明しています。
愛猫の行動の変化を観察
介護が必要になると、行動に変化が見られることがあります。多くの場合は神経的な面に異常がみられるせいで起こるようです。
- 過剰に鳴くことがある
- 粗相やマーキングなどの排泄問題
- 落ち着きがなく動き回ることがある
- 怒って攻撃的になる
- 隠れて寝ている
- 愛情表現をすごく見せる
などが挙げられます。私の飼っていた介護が必要になった猫にも見られた行動がいくつかありました。その中でも一番多かったのは、排泄問題と隠れてしまうことでした。
病気の状態や猫の性格もあるでしょう。介護の状態を迎える前に知っておくと、慌てなくて済みます。
介護の心得
人も動物も同じことが言えますが、介護はとても大変です。飼い猫の介護をする上で心構えをしておくこともおすすめします。参考になる本を2つご紹介します。
猫の介護に必要なケア
飼い猫の介護をしていく上で、ポイントとなる点がいくつかあります。私自身が介護している時に動物病院で教えてもらったことや、猫友に教えてもらったことを紹介したいと思います。
ブラッシング
猫は、歳を取ると体の柔軟性がなくなるようで、毛づくろいが雑になります。だから飼い主が代わりにブラッシングをしてあげなければなりません。ポイントは、「優しく撫でるように」です。そうしないと、毛が大量に抜けたり、痛がったりします。
また、口周りや肛門周りなどは濡れティッシュなどを使って拭いてあげないといけなくなることもあります(グルーミングを自分でやらなくなってしまった場合)。
シャンプー
シャンプーは毎月できなくなるでしょう。入れる際は素早く洗って素早く乾かします。そうしないと風邪をひいてしまうことがあるからです。水のいらないシャンプーがありますので、それを活用してもいいでしょう。
爪切り
爪切りはこまめに切ってあげましょう。猫は通常爪をしまっていますよね。それは、じん帯があるので出し入れができていからです。でも老猫になると、じん帯が弱って爪が出たままになってしまうこともあるのです。
爪が出ている状態で体を掻けば傷だらけになってしまいます。だから、爪切りはこまめに行ってください。その際はケガをさせないように注意しながら切りましょう。
老猫・介護猫用の寝床
温かくてふかふかの寝床を用意してあげましょう。毛が抜けて皮膚が出てしまうこともありますし、自律神経も弱っているので体温調節が難しくなります。隠れてしまうことが多くなってきたら、その場所にも毛布などを敷いてあげるなどの配慮が必要です。
また、寝てばかりになると床ずれを起こしやすいので、体圧分散できるベッドを用意しましょう。
食事と水
老猫には特に食べやすいものを用意してあげるとは思いますが、食欲不振で食べきれないことも珍しくありません。残しているときは片付けましょう。水はいつでも飲めるように新鮮なものを用意してあげて下さいね。
食器などはトイレと同様に寝床の近くに置いてあげます。立って食べることがきつくなってくるようで、伏せて食べたりすることが多くなってきます。


シニア用キャットフード
キャットフードはシニア用と書いてあるものを用意てあげて下さい。動物病院でも勧めてきます。全年齢対応のキャットフードでも大丈夫ですが、カリカリしたものはほとんど食べられないので、柔らかくふやかしてあげるという方法もあります。
また、運動量が減るので与える量も減らしましょう(肥満を防ぐためです)。
歯磨き
キャットフードが柔らかいと、どうしても歯間に汚れが溜まりやすくなります。毎回でなくていいので歯磨きをしてあげましょう。歯周病になってしまったら、食べることがつらいので余計に弱ってしまいます。
歯ブラシは老猫用のものが売られていますのでそれを使います。また、歯ブラシを使わずに指で磨ける歯磨きシートもありますので、以下の記事を参考にして下さい。
トイレ問題
介護が必要ということはトイレに行くのも大変ということです。足腰が弱ってきている猫にとって、トイレが遠いのは大変です。寝床の近くにトイレを移動させましょう。寝床とトイレはセットとして考えた方がいいかもしれません。
粗相がある場合はおむつをあてることを考えてください。その際は、こまめに交換したり蒸れに気を付ける必要があります。粗相をし始めたら用意するのではなく、弱ってきたなとか認知症と診断された時から常備しておいた方がいいです。実際私もそうしていました。
猫の認知症について
高齢化してくると脳神経細胞が正常に働かなくなり、認知症を起こすことがあります。早いと11歳くらいから始まる猫もいますし、まったく出ない猫もいます。それでも、15歳(人間でいうと76歳くらい)の猫の場合、約50%に認知機能の低下がみられると言われています。
認知症の原因と症状
原因は上に書いた通り、脳の老化などによって、脳神経細胞が正常に働かなくなることです。脳が萎縮してしまうこともあり、それで認知障害などが起こります。
基本的には加齢によるものですが、それ以外に極度のストレスが大きな原因となることがあります。例えば老猫になってからの引越しや、病気などで入院(環境が変わる)などが挙げられます。
症状はさまざまありますが、最初に気づくのは粗相や失禁かもしれません。その他には以下のような症状がみられます。
- 意味もなくうろうろする
- ドアの前で立ちすくむ
- 無反応
- 意味もなく泣き続ける
- 甘えてこなくなる
- 食欲不振
- 呼んでも知らん顔
- おもちゃへの興味がなくなる(興味の低下)
- 自宅(室内)で迷子になる
- 家族を認識できない
- 攻撃性が強くなる
- 不眠と過眠を繰り返す
猫友の話では。名前を呼んでも反応しなくなったり、失禁や攻撃性が強くなったりすることが同時に起こることがあるそうです。「なんか変だな?」と感じたらすぐに動物病院に連れて行くことをおすすめします。早い方がいいです。
認知症の治療や対処
根本的な治療法はないのが現状です。症状の緩和や進行を遅らせるというような対処療法しかありません。それでも、何にもしないで症状を悪化させてしまうよりはずっといいです。動物病院で処方してもらうことになるため、定期的に通うことになります。
認知症になって飼い主が一番困るのが、トイレ関係だと思われます。粗相や失禁を繰り返されるとニオイが取れなくなってしまいますから、飼い主の方がストレスにさらされてしまいます。上にも書きました通り、寝床近くにトイレを設置し、状況に応じておむつを使うようにしてください。大切なのは、飼い主の都合ではなく『猫に合わせる』ことです。
認知症の予防はできるのか?
できることならば「老猫になっても認知症にならないようにしたい」と誰しもが思いますよね。実は若い頃から次のことをすることで予防することが可能です。
- 運動
- 飼い主とのコミュニケーション
- 食事療法
運動をさせることで、体だけでなく脳も活発に働きます。それに心にも活力を持たせますので認知症になりにくいと言われています。またコミュニケーションをたくさん取ってあげることも認知症予防になります。
次に重要なのが食事です。食事は適量を与えることでカロリーの管理もできます。老猫になったら、摂取する内容もシニア用に変えて、リスクを軽減するようにすることも大切です。
そしてシニアの年齢に入ったら、定期検診の時に獣医から認知症の予防について話を聞くようにしましょう。
飼い主と老猫の負担軽減のために
老猫になった愛猫を介護することは大変です。認知症だったらなおさら。飼い主に時間的・金銭的・体力的・精神的な負担が生じますからね。その中でも金銭面の負担が大きいと感じるでしょう。そのために、生活状況・経済状況に合わせる必要が出てきます。
医療費が予想以上にかかりますし、老猫用のエサも結構かかります。エサやおむつなどはネットで購入するなど、少しでも安い買い物をすることはできます。
医療費はペット保険に早めに入るなどして負担を少しでも軽減するように工夫することをおすすめします。
飼い主自身が生活できないような状況になるのは、愛猫にとっても不本意でしょうから…。
また飼い主も体力的に疲れて果ててしまうこともあります。そのような時は、老猫ホームやペットシッターなどのサービスを活用することを考えましょう。
介護をする場合は、猫が苦痛を感じないように、快適に過ごせるように工夫してあげることが大切です。まずは今必要な環境作りをし、その後は必要に応じて順次整えてあげるようにしましょう。
猫の介護まとめ
猫がおかしな行動や今までと違う行動を取ったら、自己判断をしたりせずに動物病院を受診しましょう。自己判断は危険です。経験者として言います。猫の介護は本当に大変です。でも負担を軽減することはできます。今の時代は介護疲れを軽減しやすい環境が整っていると言えると思います。
とは言っても、もし認知症と診断を受けたら、すごく落ち込んでしまうかもしれません。私の猫友も落ち込んでいました…。しかし、落ち込んでばかりはいられません!準備しなくてはいけないもの(おむつなど)を用意したり、生活環境を変える必要が出てきます。
ストレスが原因で悪化するようなことがあれば大変です。対処できることはなるべく早めにやってあげることをおすすめします。シニアになった飼い猫が過ごしやすいようにしてあげることが、飼い主にとっても負担軽減につながります。
それに認知症と診断されたら投薬が始まるかと思います。そうすれば症状をこれ以上進行しないようにできます。まだ認知症になっていない場合は、認知症を予防するために、若い頃からできるだけ運動をさせたり、コミュニケーションをたくさん取ったり、食事にも気をつけるなどできることはなるべくやってあげてほしいと思います。
愛猫を最期の時までしっかり面倒を見られるように、知識と情報を持っておきましょう。そうすれば、きっと助けになります。