猫の感情を知りたいと思っても、なかなか知ることが難しいはずです。何せ猫は話せません。人間のコミュニケーションツールの重要な1つである「言葉」が使えないのですから。
しかし脳科学の面と心理学の面から、猫の感情や心の同調などさまざまな心の動きが人間と似ていることがわかりました。その辺のことを踏まえながら、お話ししていきたいと思います。
猫の感情は人間に似ている?
人間と猫を比べると、同じほ乳類ではありますが、体つきなど違うところが多々あります。だから猫は猫の感情を持っていて、人間には伝わりにくいと考えている人が多いようです。ですが猫を1度でも飼ったことがある人には、気持ちが猫に伝わるということを知っているはずです。
脳科学の面からの解釈
マイアミ大学の多感覚研究をしているチームが、「猫の脳の構造についての研究」を発表しました。研究結果によると、『猫の脳の構造は、人間の脳とよく似た構造(約90%)を有していることが分かった』ということでした。
また猫の大脳皮質は犬よりも2倍も発達していることがわかっているだけでなく、構造はとても複雑になっているということも分かっています。(Psychology Todayより一部抜粋)
「大脳皮質」とは、知覚や随意運動、思考や推理、記憶などといった考える部分の中枢を司っている部分です。猫の大脳皮質が発達していることから、人間と近い感情を持っているのではないかと推測することができます。
心理学の面からの解釈
脳の構造が似ているということは、心で喜怒哀楽を感じ取ることができるということです。実際に猫の行動を見てみると、甘えたり怒ったりなどさまざまな表情をみせます。また、人間の気持ちを感じ取り共有しようとします。飼い主が落ち込んでいるような表情や雰囲気を感じ取り、近くに寄ってきて側にいるなんていうことがあるのも、心の面が発達し人間と似ているからでしょう。
私が仕事で落ち込んでいるような場合、書斎から出て、テレビを見るなど気分を落ち着かせようとしてソファーに寝転がって考えていると、飼い猫が寄ってきてスリスリしたり、「ニャーン」と鳴いて、お腹の上に乗って手を舐めたりしてくれます。気持ちを共有してくれているからこそ、このような行動に出てくれるのではないでしょうか。
猫を好む人は、心理学の面からみると、『孤独を好む傾向にある』・『広く浅くの関係よりも狭く深くの関係を好む傾向にある』など、個人主義的な面があるとされています。猫の性質とやはり似ているところがあるのでしょう。
猫の感情表現は体と鳴き声
猫のコミュニケーション方法は、次の通りです。
- 鳴き声
- しっぽの動き
- マーキング
鳴き声は、声の大きさだけでなく、声の高低音などで感情を表現しています。おねだりするとき(お腹が空いたなど)の鳴き方と、怒っている時の威嚇の鳴き方が違うようにです。
一番大きく感情表現を占めているのは、しっぽの動きではないでしょうか。振る・体に巻き付ける・ぴんと立てるなどさまざまな動きをさせて、人間に自分の気持ちを示しています。しっぽの短い猫も、細かい動きで一生懸命に意思表示をしています。
マーキングに関しては、縄張りやテリトリーを守ることを中心として、飼い主にすり寄って自分のニオイをつけるような行動をします。
研究からわかった猫の心の動き
猫の心はさまざまな研究のおかげでわかってきた部分がかなりあります。感情は脳の構造からみて、怒りや恐怖を大きく感じるようになっています。そこから、安全であるか否かなどを判断する傾向にあるそうです(本能的な面から考えれば当然でしょう)。
感情を司る前頭葉もありますので、怒りや恐怖ほどではありませんが、喜びや悲しみといった部分も感じることができています。また、思考や理性を感じることもできますが、それほど多くはありません。
そんな猫ですが、愛情を感じることができることもわかっています。記憶力はそれほど強くありませんが、嫌な記憶や怖かった記憶は忘れません。
感情をコントロールすることができますので、理性を働かせることもできますが、本能が勝ってしまうことの方が断然多いでしょう(この辺りは当然ですね…)。
主従関係などを持つことはなく、単独での行動を好みます。そしてもちろんのことマイペースです。飼い主を対等に見ています。しかし、心の同調をみせるのはパートナーとして家族として、とてもうれしいことだと考えます。
まとめ
猫はマイペースで自分が一番大事ということが一般的な常識だったように感じます。しかし、研究の結果では愛情を感じることもできますし、理性を持っていることもわかりました。性格の基本的なところは一般的なイメージと変わらないようですが、決して冷酷やハートを持っていないなんてことはないのです。
猫と人間は似ている構造をしているということがわかっただけでも、愛情を持って飼いやすくなるのではないでしょうか。飼い主が悲しい気持ちになっていることがわかれば、寄り添って悲しみを分かち合おうとする姿は、やはり考え方や感じ方の面で人間に近いからではないでしょうか。